呼吸器疾患
呼吸器疾患
発作的にゼーゼーヒューヒューといった音(喘鳴)がして息苦しくなるとともに、せきや痰(たん)が出る症状を不定期に繰り返す病気です。正式には気管支喘息といい、夜間や早朝に出やすいのが特徴です。
慢性的に炎症を起こしている気管が何らかの刺激で発作的に狭くなることによって喘息発作を起こします。原因となる刺激にはチリやダニなどのハウスダスト、タバコの煙、カビ、ストレスなどさまざまですが、原因が分からないこともあります。
発作が起きれば即効性のある気管支拡張薬を吸入しますが、症状が落ち着いても気管の炎症は続いています。放置すると気管が硬く狭くなって元にもどらなくなる恐れがあるため、ステロイド薬などで炎症の改善を図る必要があります。
日本では喘息患者が増加傾向にあり、高齢者を中心に年間約2000人が喘息発作で亡くなっています。小児喘息も増えており、特にアレルギーやアトピー性皮膚炎の子どもは発症のリスクが高まります。ただ、喘息でなくても喘鳴を伴うよく似た症状が出ることがありますので、しっかりした診断が必要です。
結核菌という細菌に感染して起こります。結核菌はせきなどで飛沫感染しますので、結核患者は隔離入院が義務付けられています。感染しても結核になる人は10%程度で、多くの人は免疫ができています。ただ、高齢者で抵抗力が弱ったりすると発症する危険性が増します。結核菌はリンパ節や腸、骨などにも感染します。
かつては国民病とまで言われていた結核ですが、ペニシリンなどによる化学療法の普及で激減しました。とはいえ、最近は年間患数は横ばいで、結核に対する認知度が下がったため学校などでの集団感染も起きています。
全身倦怠感やせき、痰(たん)、微熱が続く、発汗、体重減少などの症状が出て死亡に至ることもあります。治療は長期に及びますが、服薬をきちんと続ければ、ほぼ治る病気です。ただし、途中で服薬をやめると薬剤耐性結核となって薬が効かなくなってしまいますので、根気のよい取り組みが必要です。
アレルギー性疾患の一つで、植物の花粉が鼻や目の粘膜を刺激してくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみを引き起こします。日本で多いのはスギ花粉症ですが、ヒノキやブタクサ、マツなどに加えてイネ科の植物の花粉なども原因となります。
花粉症患者は近年増加傾向にあります。戦後全国に植林されたスギが成長して大量の花粉を飛散するようになったことに加え、排気ガスや大陸からのPM2.5などによる大気汚染、衛生環境がよくなって免疫が十分につくられず、少しの刺激で反応が出てくるようになったことなどが、原因として指摘されています。
花粉症発症を防ぐためには、花粉の飛散が多い時は外出を控え、洗濯物を室内干しにする、帰宅時に服や髪の毛に付着した花粉を落とす、ハウスダストやダニを排除するなど室内環境をきれいにすることなどが効果的です。
薬物治療では、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの投与のほか、スギ花粉症に対する舌下免疫療法が注目されています。スギ花粉を原料としたエキスを含む錠剤を舌の下に含み、体をスギ花粉に慣らすことで発症を抑えるものです。効果が出るまでに時間がかかりますから、翌年のスギ花粉シーズンに向けての対策と心得ておくといいでしょう。
細菌やウイルスに感染して肺に炎症を起こす病気です。日本人の病気による死亡数でがん、心疾患に次いで第3位です。肺炎で最も多いのが肺炎球菌によるもので、インフルエンザの合併症としてもよく見られます。
発熱やせき、痰(たん)、胸の痛み、息切れなどのほか、疲れやすかったり、発汗、腹痛、吐き気などが出たりします。重症の場合は呼吸困難を伴います。ただ、高齢者の場合、初期には症状を自覚しないこともあります。
治療は病原微生物を調べたうえで、抗菌薬を用いますが、日ごろからバランスの良い栄養摂取に務めるとともに、適度な運動、タバコを吸っている人は禁煙を心がけるようにしてください。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種も予防に効果的です。
慢性閉塞性肺疾患といい、かつて慢性気管支炎、肺気胸と呼ばれていた病気の総称です。有害物質に長期間さらされて起きる気管支や肺の炎症疾患で、原因の8割は喫煙とされます。
中高年に多く、40歳以上では罹患者が8.6%と推計されています。気管支では炎症が起きて細くなり、肺ではブドウの房状の肺胞が潰れ、酸素の取り込みや二酸化炭素の排出量が少なくなります。このため、息切れがしやすく、せきや痰(たん)が出ます。
治療の基本は禁煙で、呼吸訓練や栄養療法、運動療法を併用することもあります。薬物療法の中心は気管支拡張薬で、重症の場合は吸入ステロイド薬も用います。
鼻からのどの奥までの上気道が狭くなって、睡眠中に無呼吸を繰り返す病気で、さまざまな合併症を起こします。女性より男性がやや多く、男性では40~50代、女性では閉経後に増えます。
上気道が狭くなる最も多い原因は肥満ですが、肥満でなくても、扁桃腺肥大や鼻中隔湾曲で鼻の中の空気の通りが悪いことや、あごが後退していたり小さかったりするのも原因になります。
いびきや夜間の頻尿、日中の眠気、起床時の頭痛などの症状が出、高血圧や心筋梗塞、脳卒中を起こすリスクが3~4倍に高まるとされます。
治療ではCPAP(シーパップ)が効果的です。睡眠中にマスクを装着して空気を送り込み、その空気圧で気道を広げる装置です。下あごを前方に移動させるマウスピースもあります。いずれも根本治療ではありませんので、生活習慣を見直し肥満解消を図る必要があるでしょう。
胸の内側の胸膜に包まれた胸膜腔にたまる液のことです。胸膜腔には常時少量の胸水がたまっていますが、毛細血管から水分がしみ出しやすくなったり、血液中のたんぱく質などが減ったりすると、その量が増えます。
前者を滲出性胸水といい、細菌性肺炎や結核性胸膜炎、膠原病などで起こります。後者は漏出性胸水と呼ばれ、最も多くみられるのが心不全で、肝硬変やネフローゼ症候群などでも胸水がたまります。
胸水がたまると胸の痛みや息切れ、せき、しゃっくりなどが出ます。胸水を取り除くには胸膜腔内に管を入れて吸い出す方法などがありますが、根本的には原因となっている病気の治療が必要です。